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墨付け開始

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材木のおおよその木配りが決まり、墨付け、刻みが始まりました。
大工仕事をしていて何が一番面白いかと聞かれたら、まず私はこの墨付け、刻みと答えます。
なにもないまっさらの材木に、柱や梁が取り付く仕掛けを描き出し、それを細工する。
一軒の住宅となるとその細工個所は数え切れぬほどの数になるわけですが、その組み上がっていく姿を想像しながら材木と向き合う。
材木は重いし、量は多いし決して楽な作業ではないのですが、そんな苦労があるだけに、無事お建前となった時の安堵感、達成感は何ものにも代えがたいものがあります。

近年、住宅建築の現場ではその95%以上が「プレカット」と呼ばれる、大きな工場で加工された木材を現場で組み立てるだけになってしまっています。
そこには墨付け間違いや刻み忘れなどは存在せず、安心して作業をすることができます。
私も応援要請などがあればそうした現場に駆け付けることもあるのですが、失礼ながら、作業している職人さんたちが決して、楽しく働いているとは思えないのです。
一日のうちに決められた作業を黙々と効率よくこなす・・・それが至上命題でありすべてとなります。
それはそれでとても大切なことであり、私も自分の仕事で目指しているのはそうした作業なのですが、ただそれだけでは面白さはそこまでです。
こんな風に材料を使えば、より美しく見せることができるのではないだろうか・・・こう納めればより強固に緊結することができるんじゃないか・・・やはりこうした方が経年劣化から材料を守ることができるよね・・・等々。
仲間の大工と共にあーでもないこーでもないと話し合いながら最終形を想像しながら決めていく。
そうして思い通りに納めることができた時の喜びは、やはり格別です。

世の中、現場仕事に就く若者がいないという嘆きの声が聞こえてきますが、仕事のそうした楽しさを奪っておきながら、何をいまさらの感があります。
皆が知恵を絞ってよりよいものを作り上げていく、そんな環境をつくり出していくことこそが、ヤル気のある若者を引き付ける唯一無二の方策ではないだろうか、私はそう思います。
理想を言えばそこに対価となる潤沢な利益が発生すれば万々歳なのですが、そうは問屋が卸さない・・・そこが大問題ではあるのですが。

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墨付け開始 大工を生業として25年。趣味の長距離走、渓流魚との戯れなど日々の思いを綴ってみます。

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